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紙ふうせんだより 3月号 (2020/04/30)

人権」は誰のもの?

ヘルパーの皆様、いつもありがとうございます。3月16日、やまゆり園事件の被告に死刑判決が下されました。判決を受けても被告は「死刑に値する罪ではない。時間と金を奪う重度障害者に基本的人権はない」と述べているようです。これを特異な性格による特殊な事件として考えてはいけません。事件当時インターネットには犯行を賞賛する声が多く見られたからです。被告もその賛同者も、「人権」を与えたり奪ったりできるという誤った考えを持っています。人権とは法律や国家の規定に関わらずに、全ての人が生まれながら持っているものです。

「人権」を教えない日本の義務教育 道徳教育の問題
「日本の学校教育制度における人権教育(※1)」によると、2002年から導入される学習指導要領(※2)において「人権または人権問題は、いくつかの学年で「教えなければならない知識」に指示されているが、人権教育は、教科あるいはコース、あるいは課外活動として指示されてはいない。自立・平等・人間の尊厳・寛容・世界平和などの人権に関わる概念はいずれも「道徳教育」に含まれている。しかし、自由及び人権という概念は道徳教育ではふれられていない。」となっている。自分が受けた義務教育内容を思い出してみても容易に想像がつくが、「個人の尊厳」や「個人の自立」などの確固としたものは無く、ただ“仲良く”“皆で一緒に”といった全体志向の中に“友達を大切にしましょう”“思いやりを持ちましょう”と情緒レベルに人権が薄められて、きちんと人権が教えられていないのだ。人権を理解する為には「個」の多様性を考える必要があるのに、道徳教科書は、かけがえのない「個」に焦点を当てないで、全体の“秩序維持”が重視されている。(※3)
例えば小学一年生の道徳教科書では、カボチャが蔓を自由に伸ばしている様子を“ワガママ”と捉えて、“皆が困っている”とし、犬がカボチャを踏みつける行為(イジメ)を助長している。本来植物は光を求め自由に伸びて行くものだ。その自然の営みを超越的な存在の車に轢かせてしまう事は、子供に対して「自分らしく自由に育つな」「和を乱したら制裁されるぞ」と脅しているようなものだ。これでは「きそくただしい せいかつ」ではなく、「学校の規則を守れ」という大人都合の命令でしかない。

※1鍋島祥郎(大阪市立大)他

※2約10年に一度改訂

※3人権侵害は全体(多数・政府・強者)対少数という構造的な権力関係の非対称性(構造的暴力)があり、それにお墨付きを与える文化的暴力(社会の風習や文化)が背景にある。


他者の痛みへの共感を教えない道徳教科書


 このような刷り込み教育の結果、日本では個人の尊厳よりも集団の輪を乱さない事が大切な事となってしまった。日本の社会では全体の秩序維持のためには、少数者への人権侵害が許されてしまうのだ。社会保障費が枯渇しているという財務省発信の刷り込みが蔓延して久しい現在、やまゆり園事件に同調する者が「障害者はお金がかかるから皆の迷惑」と考えてもおかしくはない。だが、ちょっと待って欲しい。人には他者に共感する力があるはずだ。いくら大義名分があっても、他者の痛みへの共感によって、障害者差別が悪いという事くらい解るはずではないのか。では「かぼちゃの つる」の「まなびの てびき」を見てみよう。全ての項目がかぼちゃから“反省”の言葉を引き出す誘導となっている。この設問の流れでは、素直な子供が「かぼちゃだって言い分あるのにな」「痛いだろうな」と思っても、授業の空気を読んで発言を控えてしまうだろう。こうやって子供は同調圧力に順応し長い物に巻かれる事を覚えていくのだ。

人々が「人権」を知らない事によって、誰が得をするのか

人権思想は専制君主の横暴に対抗して西洋で生じました。王の権力は“人民を守る”との人民との約束(義務)によって成り立っているので「人民を守れ」と国王に要求できる。これが人権です。そしてフランス革命やアメリカ独立革命という命がけの戦いがあって、人権思想は確立していきます。明治になって日本にも人権思想が入ってきました。生まれながら持っている人権には「天賦(ぶ)人権」という訳語が当てられました。「天(※4)」とは自然の摂理です。しかし当然現実の社会は、権力を持つ者によってあるべき状態が歪められ、身分の下の者の人権はないがしろにされていました。福沢諭吉(※5)は「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」と『学問のすゝ(す)め(※5)』で訴え、学問を身に付ける事によって差別を乗り越えて行けると主張しました。『武器』があれば弱者も権力と戦う事ができるのです。福沢は「愚民の上には悪い政府、良民の上には良い政府が理(ことわり)。人民が学問を身に付ければ政府の法も良くなる」との趣旨を述べています。良い介護、良い政治、良い社会、悪人に騙されない事、より良き自己への道は、まずは自分自身が何をどのように『学ぶ』のかが大切なのです。



↑Twitterの犯行を賞賛する声

※4植木枝盛は『天賦人権弁』(1883)で天賦人権は 「天然の人権」であり「国家ありて然後にその法律の上に生じたるもの」とは異なると述べた。

※5明治六大教育家の一人。中津藩の蘭学塾を慶應義塾に改める。

 

紙面研修

どうやって人権が奪われていったか

 

【“ニーメラーの警句” 明日は我が身】

第二次世界大戦中、ナチスドイツ民族浄化と称して600万人以上のユダヤ人や20万人の障害者を虐殺している(虐殺総数は1100万人との説も)。ナチス(国家社会主義ドイツ労働者党)は、当時世界一民主的な憲法と呼ばれたワイマール憲法の中にある緊急事態条項を使って、憲法の効力と人権を停止させて独裁政権を完成させた。ナチスの手口は、ナチスがテロを自作自演(国会議事堂炎上事件)し、それを共産党の責任として共産党や野党を弾圧、国家防衛を口実に国民の基本的人権を停止する大統領令を出した。この大統領令がユダヤ人迫害、ホロコーストへとつながっていった。この時の事を反省する有名な警句がある。キリスト教の牧師だったドイツ人のマルティン・ニーメラーは、最初はナチスの支持者だった。しかし、教会からのユダヤ人追放政策に反対し、反ナチスとなった。ニーメラーは強制収容所に収容されたが、ホロコーストをまぬがれ収容所から奇跡的に生還し、反戦平和運動に生涯を捧げている。ニーメラーは、誰かへの人権損害を放置した結果が自分自身への人権侵害となる事を警告する詩を書いている。

「彼らが最初 共産主義者を攻撃したとき」

ナチスが最初共産主義者を攻撃したとき、私は声をあげなかった

私は共産主義者ではなかったから

社会民主主義者が牢獄に入れられたとき、私は声をあげなかった

私は社会民主主義ではなかったから

彼らが労働組合員たちを攻撃したとき、私は声をあげなかった

私は労働組合員ではなかったから

そして、彼らが私を攻撃したとき

私のために声をあげる者は、誰一人残っていなかった
 
考えてみよう

 ・誰かへの「人権侵害」を目撃した時、自分はどうしたら良いだろう?

・なぜ「人権侵害」が悪いのか、どうやって説明しますか?

・日常に潜む人権侵害にはどんなものがあるだろうか。
 
私たちの生活を支えている「人権」と「権利」(一部抜粋)

自分の思ったことを自由に口にすること、自分の選んだ宗教を信じること、自由に学ぶこと、自分の選んだ人と結婚すること、好きな服を着ること、好きな音楽を聴くこと、病気になったら医療を受けること。これらはすべて、私たちが持っている「人権」です。

今の日本では、「あたりまえ」だと思われているこれらの人権。しかしこれらは、ずっと「あたりまえ」だったわけではありません。これらの人権を「あたりまえ」にしたのは、これらの人権がないために苦しんできた無数の人びとの願いと命をかけた努力なのです。

私たちが暮らす社会には、色々な権力関係があります。警察と一般の市民。会社の経営者と、被雇用者。学校の先生と生徒の間にも力関係がありますね。

権力は、どのような社会においても、かならず生まれます。秩序をつくるために権力が必要なことも少なくありません。警察がいなければ、強盗や泥棒から身を守るのは大変です! でも、権力はよく乱用されます。「権力は腐敗する。絶対的な権力は絶対に腐敗する。」という格言もあります。何も策を講じなければ、弱い側は虐げられる一方になりかねません。そこで、権力関係の中でも人間の尊厳が守られるように、弱い側が「人権」という概念を生み出したのです。

(アムネスティ・インターナショナルHPより引用。アムネスティ・インターナショナルは1961年に発足した世界最大の国際人権NGO、1977年ノーベル平和賞受賞、翌年に国連人権賞を受賞)
 

現行の道徳教育は2006年の教育基本法の改正(第一次安倍政権)によって愛国心教育等が義務となり道徳が教科として学習達成度を評価されるようになったが、問題点が多いとされ様々な団体が意見表明をしている。「子どもに対し、国家が公定する特定の価値の受け入れを強制することとなる点で、憲法及び子どもの権利条約が保障する個人の尊厳、幸福追求権、思想良心の自由、信教の自由、学習権、成長発達権及び意見表明権を侵害するおそれがあり、見直されるべきである。」(東京弁護士会)


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