【紙ふうせんブログ】

令和3年

紙ふうせんだより 3月号 (2021/04/26)

「聴くに値する」声とは・・・

ヘルパーの皆様、いつもありがとうございます。桜が咲きましたね。あと何回私たちは桜を楽しむことができるでしょう。
できることなら命の終わりの時まで花鳥風月を愛でる気持ちを抱いていたい。
そう願いながらも心の余裕を無くし何かを楽しむ気持ちは失せ「人生終わりだね」と嘆くようになることは誰にでもあり得ることです。だから「そうなったらそれは意味のある展開で、その時こそ自己変革の時なのだ」と心しておきたいと思います。

「変わりたい」と心の奥底では叫んでいる状態像

「あれができない」「これができない」といった嘆きは過去の自分との比較です。
過去の栄光はもはや遠く、新たな時代や世界に突入してしまっているというのに、その中での自己像は確かな焦点を結ばず、「あれができる」「これをしよう」という
主体としての自分自身が朧に霞んでいるから意欲も失せがちになってしまう…。

このような状態像は、高齢者だけではなく若者にも見られることです。
「スチューデントアパシー」という概念が1960年代からあります。「アパシー」とは意欲低下や無気力と訳します。
大人への登竜門のように大学受験には懸命になったけど、いざ入学してみると「何を学びどのようにそれを将来に活かしていくのか」というイメージが掴めずに、
意欲が停滞してしまう大学生がいます。天真爛漫に遊んだ子供時代はもはや遠く、新たな時代を拓こうと受験勉強に努力し勝ち抜いたのも既に過去の栄光です。
にもかかわらず将来の“夢”は大学に合格しただけでは焦点を結ぶことは無く、「何の為に俺は大学に入ったのかな…」と、落ち込んでしまいます。
具体的な志を持って高校卒業と同時に職人を目指した友達が眩しく見えて、その分だけ自分の思慮が浅く見え、自分は「ただ大学に受かりさえすれば良い」と安易に考えていたんじゃないか、と過去の自分を責めてしまうのです。ざっくりと言えば青年期の心理的課題は「自己確立」で、晩年の心理的課題は「自己統合」です。
不安定な過渡期の期間にあってどちらも「自分とは何か」という「自己」を標的としています。朝日と夕陽が似た色合いなのと同じように、状態像は似てきます。
スチューデントアパシーの研究では、それを「時間感覚が乏しく、生活リズムが乱れ、生活に張りがない」「物事に興味や意欲が湧かず、生活全体が受身的となる」などとしていますが、これらは高齢者にもあります。そして、責任回避的なところや「批判が予想される状況からの選択的回避」の背景には、殻に籠りながらも無意識的には自分を責めている心理が伺えます。

臨床心理学研究の理論と実際-スチューデント・アパシー研究を例として-(1997)下山晴彦(一部抜粋)
・批判が予想される状況からの選択的回避。
・自らが陥っている困難な状況に関してその事実経過は認めても、それを自らが対処していかなければならない深刻な状況として受け止められない。
・問題解決行動を約束しておきながら、その場面になると回避行動をとり、一貫性のない行動を繰り返す。
・感情の動きが乏しく、楽しいとの感覚がない。生き生きをした実感がなく、物事に興味や意欲が湧かず、生活全体が受身的となる。(感情希薄)
・時間感覚が乏しく、生活リズムが乱れ(昼夜逆転など)、生活に張りがない(一日中ボーッとしている)。それに焦りを感じない。(時間感覚の希薄)

自分を責めてしまう硬直した考え方

自分を責めてしまう方は、ある種の“真面目さ”を持っています。“勝手気まま”に生きてきたような方は、責任を強く感じるというようなことは少ないように見えます。
社会的な役割や責任ある立場を得て自己像は安定し「中年期」が始まりますが、この時期の標的は「社会」です。意味のある仕事に取り組み子育てや後継の育成をして、社会の担い手のバトンを次世代に繋いでいきます。そして社会的な役割から降りるところから老年期が始まります。
青年期や老年期になって自責の念が湧いてくるのは、社会的なミッションが見えなかったり、その責任を果たせないと思うからなのでしょう。
苛立ってしまい責める気持ちを他人に向けてしまう人もいるでしょう。
「齢をとるとこんなになるとは思わなかった。がむしゃらに仕事をしてきた自分の思慮は浅かった」などと自分を責めてしまう利用者さんもおられますが、
真面目なのだからこそ地力は持っているはずです。自責のエネルギーを方向転換して狭い自己評価の型を壊し、型に押し込められた自己像を解放していくことが必要です。

自分の中の「支配的な考え」に疑問を持つ

さて、狭い型に自己像を押し込んでしまう「思考の型」について考えてみましょう。既成概念の中に安住して広がりを持たない思考の型を「垂直思考(※1)」といいます。
垂直思考は意見や価値の上下にこだわります。囚われすぎると視野は狭くなります。権威(法律・会社・学校・先生)や自分の考えからはみ出すことを恐れて、
物事を硬直化(マニュアル化)して理解します。自分が“理解”したことは「こんなの当たり前だよ!」と疑問無く振りかざし、それに反する考えは“誤り”と決めつけてしまいますから、自分の中に新たな考え方を導入することができません。創造的な発想が求められても一般論に終始してしまいまい、経験の範疇外の事象には対応できません。
そして、本当の意味での「自分らしさ」も、自分の中の経験則や「支配的な考え」で塗りつぶしてしまいます。同様に、他人の「その人らしさ」も軽視したり見落としてしまいます。

遂には「支配的な考え」に適合しない自己像に対しては“失格”の烙印を自分で押してしまうこともあるのです。しかしこれは“変わり時”です。
垂直思考から脱するために必要なのは「水平思考」と呼ばれています。水平の意義は、価値の上下を安易に決めつけてしまう意識から距離を置くことです。
権威をうのみにすることも、他人の意見の上に自分の考えを常に置いてしまうこともありません。様々な考えを「聴くに値する」ものとして検討してみることがモットーですから、反対意見にも、多数者の陰に隠れた少数意見にも、立場の低い者の声や声なき声にも耳を傾けようと努めます。もちろん自分の中の小さなしこりにも気を配るでしょう。

だから新たな発想が生まれてきます。
「自己」を標的とする発達課題が生じる時期は、今まで大きく聞こえてきた“自分の声”と思っていたものが実は、
関係性の中で自分に刷り込まれてきた借り物の考えではないかと疑問を抱く時期でもあります。自分の中にある支配的な思考の型を捨てて、
自分の中の自信の無い弱い声にも耳を澄ませてみましょう。大きな否定の声に隠れて小さな肯定の声も聞こえてきませんか。思考の型の創造的解体が行われるならば、
いままで気が付かなった物事の価値や側面、例えば「××が実は自分の〇〇だった」などが見出されるでしょう。そうやって自己存在に関する再評価が行われること。それが自己確立や自己統合なのです。

※1 ※ イギリスの心理学者デノボが提唱した「水平思考」と対概念となる思考方法。一般的には順序立てた論理的思考を指すが、
順序などに囚われると権威主義化し思考は硬直する。そのため「水平思考」では固定観念を取り払い自由な発想からの創造性の展開を目指す。
ランダム発想法・刺激的発想法・挑戦的発想法・概念拡散発想法・反証的発想法などがある。</font size>

 

紙面研修

「水平的思考」の発想法

エドワード・デノボの提唱する「水平思考」は問題解決のために既成の理論や概念にとらわれずアイデアを生み出す方法論です。穴掘りに例えると「垂直思考」は既に掘られている穴をさらに掘り下げることですが、「水平思考」は新しく別の穴を掘ってみることに例えられます。

ランダム発想法

一見関係なさそうな物事を結び付けて検討する。(アイデア発想法としては、辞書をランダムに引くなどして出てきた言葉と関連付けてアイデアを広げてみる)

刺激的発想法

物事のある部分を「発展させたらどうなるか?取り除いてみたら?何かと合わせたら?何かと置き換えてみたら?順番を入れ替えてみたら?」などと検討する。(アイデア発想法としては、表を作成して発想を比較して一番刺激的なものを選んでみる)

挑戦的発想法

「それはなぜ存在するのか?」「何のためにそうなっているのか?」など物事の根源を突き詰めたところを源として固定観念をひっくり返してみる。(新しい鍋のデザインの検討会で、「料理を加熱できれば、鍋の形である必要なくね?」)(介護の例:1日3回の薬がうまく飲めないんだけどどうした良い?→そもそも何の薬?3回も飲む必要ある?1回にまとめられない?)

概念拡散発想法

ある概念を他の物事に応用してみる。(介護の例:認知症進行ではなく意欲低下じゃないかな?スチューデントアパシーの状態像に似ていないかな?)

反証的発想法

提示されている考えは間違いであると仮定して、反証を試みることで打開策を検討する。(介護の例:〇〇さん歩けないんだけどどうしたら良い?→本当に歩けないの?介助方法工夫してみた?)

 

例題) 「〇〇さん、食事が全然進まないんだけど、どうしたら良い?」

「刺激的発想法」を参考に検討を深めてみよう。(「ちゃんと食べなきゃダメよ!」という垂直思考オンリーでは行き詰る場合が多々あることに気が付くことが大切です)

 

発展させてみる メニュー内容の発展や介助方法を発展させてみる→
取り除いてみる メニューの中の何か、また食事環境の何かを取り除いてみる→
やめてみる 食事の前の何かをやめてみる。食事や介助自体をやめてみる→
合わせてみる メニューの中に何か、また食事環境の何かを追加する→
置き換えてみる 食事自体を別のものと置き換えてみる→
入れ替えてみる 食事のタイミングを変えてみる→
 
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考えてみよう(担当する利用者さんを事例として)</font size>

①支援が行き詰っている人はいるだろうか?それはどのようなところだろうか。

(そこに「垂直思考」のような支援者側の発想の固さはないだろうか。)

②「水平思考」の発想法などを参考に、自由な発想で打開策を提案してみよう。)</font size>

 

介護保険改定(令和3年4月1日より) ※原則3年に1度の見直しです

【改正の要点】

1.①感染症対策の強化、自然災害時等の業務継続に向けた取り組み強化(BCP等の策定)

感染症や自然災害が発生してもサービス提供が継続できる体制を構築するため、上記について委員会等の設置や指針や計画の策定、研修や訓練等の取り組みが事業所に求められるようになりました。

2.PDCAサイクルと科学的介護の推進として、どんな利用者にどんな取り組みが効果有ったかをデータ化して、国をあげて分析しようという「科学的介護情報システム」(LIFE:ライフ)が作られました。ゆくゆくは分析結果をケアプラン作成等に活用していこうというものです。

3.高齢者虐待防止の推進介護や育児と就業の両立支援の推進(人員基準の一部緩和)。職場におけるハラスメント対策に関する事業者の責任の明確化、会議や多職種連携によるICTの活用等。

4.基本の単位が今回1単位(訪問介護 身体1 249単位→250単位)上がりました。しかし6年前の大幅マイナス改定前の2014年の水準には戻っていません。(2015年改定 身体1 255単位→245単位)

 

【訪問介護としましては、重要事項説明書と運営規定に以下の記載を行いました。】

虐待の防止 (重要事項説明書←利用者へ交付)

「高齢者の虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律(高齢者虐待防止法)」は、介護従事者の虐待行為(身体的虐待、放棄・放任、心理的虐待、性的虐待、経済的虐待)を禁止し、虐待してしまう恐れのある養護者に対しては支援をしなければならないとしています。虐待を発見した場合には、介護従事者は関係機関への連絡義務があります。

(当事業所の「高齢者虐待防止」に関する指針)

・従業者に対して人権の擁護・虐待の防止等の研修・啓発を実施します。

・従業者による利用者への虐待事例が見られた場合には、関係機関に適切に報告を行うとともに、再発の防止のための対策の検討会などを開催し、その結果について従業者に周知徹底を図ります。

・利用者の同居者や親族等から利用者への虐待が疑われるような場合には、関係機関に必要な相談を行うとともに、再発の防止に向けて介護環境の改善の検討や対応など、必要な支援や取り組みを実施します。

(職場におけるハラスメント防止) (運営規定←事業所にて閲覧可)

第12条 当事業所は、適切な指定訪問介護の提供を確保する観点から、職場において行われる性的な言動又は優越的な関係を背景とした言動であって業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの(職場におけるハラスメント)により、従業者の就業環境が害されることを防止するために必要な措置を講じる。職場におけるハラスメントとは、利用者等から訪問介護員等に対して行われるいわゆる介護ハラスメントや、上司や同僚からのパワハラ、セクハラ等がある。

(虐待の防止)

第13条 当事業所は、利用者の人権擁護・虐待の防止等のため、利用者等に対して虐待防止法について説明を行ったり、従業者に対して人権の擁護・虐待の防止等の研修や啓発を実施したり、虐待の防止のための指針等を明確化するなど、必要な措置を講じる。</font size>


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