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平成26年
平成26年5月 紙ふうせんだより (2014/06/16)
ヘルパーの皆様いつもありがとうございます。5月3日は憲法記念日です。
これから引用する文は、著作兼発行者「文部省」として発行した日本国政府による公式の「新憲法」解説で、学校生徒児童を主対象に広く配布されたものです。利用者さんの中には、学校の授業でこれを学んだ経験のある方もいるでしょう。長文ですが読んで下さい。
~あたらしい憲法のはなし~
みなさん、あたらしい憲法ができました。そうして昭和二十二年五月三日から、私たち日本國民は、この憲法を守ってゆくことになりました。このあたらしい憲法をこしらえるために、たくさんの人々が、たいへん苦心をなさいました。ところでみなさんは、憲法というものはどんなものかごぞんじですか。じぶんの身にかゝわりのないことのようにおもっている人はないでしょうか。もしそうならば、それは大きなまちがいです。
(中略)もしみなさんの家の柱がなくなったとしたらどうでしょう。家はたちまちたおれてしまうでしょう。いま國を家にたとえると、ちょうど柱にあたるものが憲法です。もし憲法がなければ、國の中におゝぜいの人がいても、どうして國を治めてゆくかということがわかりません。それでどこの國でも、憲法をいちばん大事な規則として、これをたいせつに守ってゆくのです。國でいちばん大事な規則は、いいかえれば、いちばん高い位にある規則ですから、これを國の「最高法規」というのです。
ところがこの憲法には、いまおはなししたように、國の仕事のやりかたのほかに、もう一つ大事なことが書いてあるのです。それは國民の権利のことです。
(中略)みなさんは日本國民のうちのひとりです。國民のひとりひとりが、かしこくなり、強くならなければ、國民ぜんたいがかしこく、また、強くなれません。國の力のもとは、ひとりひとりの國民にあります。そこで國は、この國民のひとりひとりの力をはっきりとみとめて、しっかりと守ってゆくのです。そのために、國民のひとりひとりに、いろいろ大事な権利があることを、憲法できめているのです。この國民の大事な権利のことを「基本的人権」というのです。これも憲法の中に書いてあるのです。
(中略)このほかにまた憲法は、その必要により、いろいろのことをきめることがあります。こんどの憲法にも、あとでおはなしするように、これからは戦争をけっしてしないという、たいせつなことがきめられています。
これまであった憲法は、明治二十二年(1889)にできたもので、これは明治天皇がおつくりになって、國民にあたえられたものです。しかし、こんどのあたらしい憲法は、日本國民がじぶんでつくったもので、日本國民ぜんたいの意見で、自由につくられたものであります。この國民ぜんたいの意見を知るために、昭和二十一年四月十日に総選挙が行われ、あたらしい國民の代表がえらばれて、その人々がこの憲法をつくったのです。それで、あたらしい憲法は、國民ぜんたいでつくったということになるのです。
みなさんも日本國民のひとりです。そうすれば、この憲法は、みなさんのつくったものです。みなさんは、じぶんでつくったものを、大事になさるでしょう。こんどの憲法は、みなさんをふくめた國民ぜんたいのつくったものであり、國でいちばん大事な規則であるとするならば、みなさんは、國民のひとりとして、しっかりとこの憲法を守ってゆかなければなりません。そのためには、まずこの憲法に、どういうことが書いてあるかを、はっきりと知らなければなりません。
(中略)こんどの憲法は、第一條から第百三條まであります。そうしてそのほかに、前書が、いちばんはじめにつけてあります。これを「前文」といいます。
この前文には、だれがこの憲法をつくったかということや、どんな考えでこの憲法の規則ができているかということなどが記されています。この前文というものは、二つのはたらきをするのです。その一つは、みなさんが憲法をよんで、その意味を知ろうとするときに、手びきになることです。つまりこんどの憲法は、この前文に記されたような考えからできたものですから、前文にある考えと、ちがったふうに考えてはならないということです。もう一つのはたらきは、これからさき、この憲法をかえるときに、この前文に記された考え方と、ちがうようなかえかたをしてはならないということです。
それなら、この前文の考えというのはなんでしょう。いちばん大事な考えが三つあります。それは、「民主主義」と「國際平和主義」と「主権在民主義」です。「主義」という言葉をつかうと、なんだかむずかしくきこえますけれども、少しもむずかしく考えることはありません。主義というのは、正しいと思う、もののやりかたのことです。それでみなさんは、この三つのことを知らなければなりません。(引用終了)
法治国家では、政策などは全て法律に基づいています。その法律は憲法に基づいています。訪問介護サービスも、介護保険法に基づいています。私達のサービスが、介護保険法に基づいているかどうかの根拠(エビデンス)は、居宅サービス計画書や訪問介護計画書になります。だからこの2つの書類がないと、介護保険の根拠が無くなるので、絶対に不可欠の書類なのです。では、皆さんに質問です。利用者さんが体調不良な様子で、訪問介護計画に無い内容のサービスを依頼してきたが、計画に無いので断った。この対応は○か×か?
答えは×です。体調不良な状態で対応しないのは憲法で定める「基本的人権」に反する恐れがあるのです。このような時は、お手数でも一度事業所にお電話下さい。例えば施設等でありがちですが、嫌がる利用者を無理やり介護手順どうりに“援助”したというような時も、高齢者虐待防止法を持ち出す以前に基本的人権の尊重に反する事になるのです。このように憲法とは法律よりも上位にあり、法律の根拠になるものが憲法です。
さて、ジブリ映画の「風立ちぬ」を彷彿とさせる利用者さんが居ました。その方は東大航空原動機研出身で、戦時中はB29よりも上空を飛べるジェットエンジンの開発をされていました。B29は高度9,000メートルを飛翔でき、日本の戦闘機はその高度に到達できないので、されるがままに日本は空襲を受けていました。新型戦闘機は完成せず、その方は日本の女性や子供の命を救おうと特攻作戦に志願し、昭和20年9月に出撃予定でしたが敗戦で生き残り、昨年90歳で天寿を全うされました。
その方の奥様は学習院出身でフルブライト留学をされた方ですが、先日「アメリカの押し付け憲法だなんて言っている人がいるけど、あれは日本人が苦労して作ったんです。私の父の知り合いの高野さんや鈴木さんなど何人もの人が、憲法草案に携わっています」とおっしゃっていました。この頃、官民で多くの憲法草案が研究・発表されており、高野岩三郎(元東大学経済学部教授)によって民間の立場からの憲法制定の準備・研究を目的として結成された「憲法研究会」の草案が、GHQ憲法草案の原型となった事は有名な話です。
このような話を聞ける事も介護の楽しみの一つですね。
憲法は最高法規ですから、憲法の精神に反する“解釈”が「閣議決定」という国民の判断を経ない独断で決定される事などは、民主主義に反し違憲であると付言しておきましょう。私達も、介護手順を見て利用者さんを見ないような本末転倒や、介護保険法を重視して憲法の基本的人権をおろそかにすることのないようにしていきたいものです。
最近、日本の一主婦の申請により、日本国憲法第9条はノーベル平和賞にノミネートされました。受賞候補者は日本国民だそうです。思えば先の大戦では日本国民は大変な苦労と犠牲を強いられました。大日本帝国憲法では国民を「臣民」と呼び、「君主の従属者」(家来)としていました。国家(天皇)の決めた事に反対するには、死ぬような覚悟を持たないとできませんでしたし、事実多くの反戦平和主義者が特高警察の拷問にかけられて亡くなっています。また、戦死や戦災死の数は日本だけでも300万人を超すと言われています。そのような血の犠牲があったからこそ成立した新憲法だと考えると、その重みは日本民族の命の重みそのものだと思われてきます。
現代社会は、“命”との深いふれあいが薄れつつあるように思われます。そのような時、介護の仕事を通じて感じられる一人一人の存在の重さを噛みしめて、身近な誰かに伝えていく事も大切だと思います。
——————————————————————————————————————————————————————————————————–(参考資料)新しい憲法のはなし 文部省著作兼発行昭和二十二年(1947)八月二日
六 戦争の放棄
みなさんの中には、こんどの戦争に、おとうさんやにいさんを送りだされた人も多いでしょう。ごぶじにおかえりになったでしょうか。それともとうとうおかえりにならなかったでしょうか。また、くうしゅうで、家やうちの人を、なくされた人も多いでしょう。いまやっと戦争はおわりました。二度とこんなおそろしい、かなしい思いをしたくないと思いませんか。こんな戦争をして、日本の國はどんな利益があったでしょうか。何もありません。たゞ、おそろしい、かなしいことが、たくさんおこっただけではありませんか。戦争は人間をほろぼすことです。世の中のよいものをこわすことです。だから、こんどの戦争をしかけた國には、大きな責任があるといわなければなりません。このまえの世界戦争(筆者注 第一次世界大戦)のあとでも、もう戦争は二度とやるまいと、多くの國々ではいろいろ考えましたが、またこんな大戦争をおこしてしまったのは、まことに残念なことではありませんか。
そこでこんどの憲法では、日本の國が、けっして二度と戦争をしないように、二つのことをきめました。その一つは、兵隊も軍艦も飛行機も、およそ戦争をするためのものは、いっさいもたないということです。これからさき日本には、陸軍も海軍も空軍もないのです。これを戦力の放棄といいます。「放棄」とは「すててしまう」ということです。しかしみなさんは、けっして心ぼそく思うことはありません。日本は正しいことを、ほかの國よりさきに行ったのです。世の中に、正しいことぐらい強いものはありません。
もう一つは、よその國と争いごとがおこったとき、けっして戦争によって、相手をまかして、じぶんのいいぶんをとおそうとしないということをきめたのです。おだやかにそうだんをして、きまりをつけようというのです。なぜならば、いくさをしかけることは、けっきょく、じぶんの國をほろぼすようなはめになるからです。また、戦争とまでゆかずとも、國の力で、相手をおどすようなことは、いっさいしないことにきめたのです。これを戦争の放棄というのです。そうしてよその國となかよくして、世界中の國が、よい友だちになってくれるようにすれば、日本の國は、さかえてゆけるのです。
みなさん、あのおそろしい戦争が、二度とおこらないように、また戦争を二度とおこさないようにいたしましょう。
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戦争の悲惨さは、利用者の皆様は、言葉少なくしか語ってはくれません。
一つは思い出したくない事であったりするからです。例えばある男性利用者は、中国に出征中に長男が病死してしまい、戦時中の事は話したくない話題となっていました。もう一つは、若い世代が、戦時中の事をあまりに知らなすぎるので、語るだけ悲しくなるからです。時代は変わってしまったんだなあ…と人知れず思われるのです。
こんなに悔しい事は無い、と私は思います。(文責:佐々木伸孝)
2014年6月16日 3:58 PM | カテゴリー: 【紙ふうせんブログ】, 平成26年, 紙ふうせんだより
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