【紙ふうせんブログ】

令和4年

紙ふうせんだより 3月号 (2022/04/22)

人生を語るも気づけば春の夢

「春眠暁を覚えず」とは、「春の夜はまことに眠り心地がいいので、朝が来たことにも気付かず、つい寝過ごしてしまう」という意味ですが、孟(もう)浩然(こうねん)の「春暁」(しゅんぎょう)の「春眠不覚暁   処処聞啼鳥」からきています。いいですね。うとうとと夢み心地のなかに、ウグイスなどの春の鳥の鳴き声が聴こえてきて「あぁ朝かな」と思いますが、気持ち良いからまだ寝てよう、という感じ。でも、今日も仕事です。皆様、いつもありがとうございます。

春の夜の夢

「春夢(しゅんむ)」という言葉もあります。「春の夜の夢」の心地よさを惜しんでいるのか、「人生のはかないさま」を譬(たと)える言葉です。「はかない」とは「人べん」に「夢」と書いて「儚(はかな)い」と書きます。睡眠中の「夢」は起きると忘れてしまうので頼りないように思われがちですが、実際には人生の羅針盤として頼りになることもあります。

ある利用者さんが「夢」の話をして下さいました。「人が集まって何かやってるなと思ったら、自分の葬式だった」と言われるのです。人垣の向こうに花の山がしつらえてあって、祭壇かな、とよくよく眺めたら遺影があって…「自分だ…」え、死んだのか? あぁ、やるべきことが色々あったのに遅きに失したか!と言うようなショックがあっただろうことは想像に難くありません。

夢は、一般的には春の暁の浅い眠りのような半覚醒状態で見ると言われています。いわば意識と無意識の中間領域なのですが、意識化されていない未整理状態の心理的課題は、無意識の領域に集積されていると考えられています。夢をありありと覚えていたのは、それが現在の意識の在り様に対して何らかの意味をもっていたからです。意識化されている世界観に何かが欠けていて、必要に迫られて無意識が夢という通路から意識へと働きかけてくるのです。

ユング(※1)が創始した分析心理学では、夢を分析するなどして無意識が意識へと働きかけてくる意味を理解することによって、新しい自己像を見出すことができると考えています。私は、利用者さんが「もうすぐ自分は死ぬんだ」という絶望感に囚われないようにと願い、ユング的な夢の解釈をお伝えしました。

「『死と再生』はセットになっています。神話や物語や芸術作品では、再生が表現されるその前段に必ず死が語られます。その構図と同じように、夢の中の死のイメージはある段階や状況の終了を意味し、再生としてその次のライフステージへと進まねばならないことを告げているのではないでしょうか。問題は次の段階にどのように入っていくかです。人生の最終ステージは今まで得てきた社会的地位などが役に立たなくなる段階でもあり、その段階に無自覚に踏み込んでしまったら、『人生で得てきたものは無意味だった』と大きな喪失感を生じさせてしまいます。しかし自覚的に入って行くならば深い人生回顧となり、今まで気が付かなかった人生の側面に気づかされ、新しい自分の発見になると思うのです。」

 

※1ジークムント・フロイトは「夢は抑圧された願望の偽装した充足である」としたが、カール・グスタフ・ユングはフロイトが性愛理論に偏りすぎていると主張し、夢は無意識や集合的無意識からの意識に向けてのメッセージであるとした。
「生かされ生きている」 命の本質に気が付く

多くの人が勘違いをしています。人生の成熟した期間が長く続いたばかりに、自分のことは自分で全てまかなえていると勘違いして、まかなえていることが「自立」であり、それが自分であると誤解してしまっているのです。しかし私たちは、誰一人として一人では命を継ぐことさえままならない存在です。

食べているお米は誰が栽培したものでしょう。誰が運んだものでしょう。土と水と太陽に育まれなければ稲は枯れてしまいます。着ている服は誰が作ったのでしょう。どこかの国の労働者がミシンをかけています。生地が化繊なら何億年も前の生物が石油となって、木綿なら綿花の、絹ならお蚕様の働きがあります。大地が無ければ人は立っていられません。自分がなぜ立っていられるのか、その支えについて知ることが本当の「自立」ではないでしょうか。

人間は、一人では生まれてくることも死んでいくこともままならない存在です。人生の最終ステージの課題は、「生かされ生きている」自分を身をもって体験することによって、「生かされ生きている」命の本質に気が付くことではないでしょうか。そう考えると、人の世話になることにも深い意味があるのです。周囲に迷惑をかけるから「死んだほうがまし」と言われる方は多くおられます。それは、これからを「新しい視点を持って生き直してみたい」という再生への渇望の表れでもあるのです。

自己統合の過程に必要なこと

死について語ると「縁起が悪い」と反応する人がいます。これは「縁起」という言葉の誤用です。「縁起」とは元来、漢訳された仏教用語で、すべてのものは「縁によって起こる」ものであるから、「ものごとの関係性(縁起)について知ることが、より深い人生理解になる」というような意味なのです。全ての現象は、原因や条件が相互に関係しあって成立しているものなのですから、自身の存在を「独立自存」のように見なしてしまうことは、自己への執着となり他からの支えを見えなくさせて、孤立感の原因ともなるのです。

生命とは、それそのものが自律的に機能し、代謝をしながら恒常性を維持し自己増殖をしていくものですが、その自立した存在は外部環境との縁という“他立”によって支えられているのです。生の根幹に関わる回答は、時に逆説的な構造(※2)で示されることがあります。「自立とは他立を自覚することによって成り立つ」とか「生まれ変わるためには(象徴的な)死を体験しなければならない」などです。

※2 沖永宜司は、禅問答の構造は「問いかけに答えるのではなく、この問いを問いたらしめているものの方へと気づいて行くこと」という面があることを指摘している(禅言語の逆説構造)。

私たちは介護の支援過程で利用者さんが事故を起こしたり急に症状が悪化するような場面に多く遭遇します。それを不安に感じる人は「もう在宅は無理ではないか」と性急な判断をしてしまいがちですが、本当にそうでしょうか。そのような課題は新しい自己像を得るために必要なこととして起きている「自己統合への過程である」と捉え直してみることも大切です。多様な視点を持っていれば、利用者さんの自己実現を介護によって阻害してしまい、かえって状態を悪化させてしまうような悲劇も避けられるはずです。

死の夢を見たその利用者さんは、後に新しい夢を見ることができました。「歯医者に行って歯の手術をされて、もうやめてくれというような状況だったけど、何とか無事に終わることができた」と言うのです。歯は生存に欠かせないもので生命力の象徴と言われています。また、歯が抜けて治ることは、乳歯が永久歯に生え変わるように「再生」を意味します。利用者さんが得ることができた新しい人生を、心豊かに過ごされるように願っています。

 

紙面研修

「ハラスメント」とは

「ハラスメント」という言葉は、一般的には「嫌がらせ」と言う意味で用いられています。「嫌がらせ」とは、他者(特定、不特定多数を問わず)に対して、不愉快な気持ちにさせることや、実質的な損害を与えるなど、不快感を与える行為の総称です。

「嫌がらせ」は英語にはHarassment(ハラスメント)と訳され、英語の意味は「苦しめること」「悩ませること」「迷惑」等となりますが、日本語と異なるニュアンスがあります。日本語の「嫌がらせ」という言葉には、行為者の「悪意」が感じられますが、「ハラスメント」の場合は行為者の悪意は問いません。悪意が無くても相手が嫌がる事は「ハラスメント」です。

「ハラスメント」は人権侵害

【人事用語労務辞典】

ハラスメントは、広義には「人権侵害」を意味し、性別や年齢、職業、宗教、社会的出自、人種、民族、国籍、身体的特徴、セクシュアリティなどの属性、あるいは広く人格に関する言動などによって、相手に不快感や不利益を与え、その尊厳を傷つけることを言います。

近年、職場における「ハラスメント」が急増し、人事管理上、深刻な問題となっています。

「ハラスメント」の無自覚性

近年、「モラルハラスメント(モラハラ)」や「マタニティハラスメント(マタハラ)」「スモークハラスメント」などハラスメントに関する言葉が増えてきました。「モラハラ夫」などという言葉も登場し、夫の無自覚な妻への依存や攻撃なども離婚の原因となっているようです。「ハラスメント」の行為者は、その言動に無自覚なことが多いために、各自が自己点検をしていく必要があります。

 
私たち皆が、ハラスメントの「加害者」にも「被害者」にも成り得る

【パワーハラスメント】

力関係の差(立場など)のあるところで必要以上の叱責や無理な要求など

    考えられる例)上司→部下(経営者→従業員、管理者→従業員)

           ケアマネージャー→訪問介護のスタッフ

           ケアマネージャー→サービス事業所

           サービス提供責任者→訪問介護員

【介護ハラスメント】

利用者や利用者家族からの必要以上の叱責や無理な要求など

考えられる例)利用者等→ケアマネージャー

利用者等→訪問介護のスタッフ

【介護虐待】

利用者さんにパワハラを行ったら心理的虐待、セクハラを行ったら性的虐待となります。

考えられる例)ケアマネージャー→利用者等

訪問介護のスタッフ→利用者

【セクシャルハラスメント】

性的な言動等で人を不快にさせたり環境を悪くするなど

    例)性的な部分を強調したポスターの掲示

    ※男性から女性へと行われることが多いが、稀に女性から男性もある

【その他のハラスメント】

  例えば、お笑い芸人がよくやる「いじり」という行為も、相手が返答に窮するようなやり方や不快に感じている場合は、ハラスメントとなります。

考えられる例)同僚→同僚(部下→上司 もあり得る)

 
現在、紙ふうせんではハラスメントや虐待対応を盛り込んだ「就業規則」への改定作業を行っています


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