【紙ふうせんブログ】

令和7年

従業員対談企画(5月号) (2025/07/10)

訪問介護で人間力が上がった?

訪問介護の実態は――(3)

 

佐々木 ところで、利用者さんを決め付けていなくて「良かった」という話の続きね。誰しも思い込みや決めつけはあるんだけど、堤さんはそういった自分の「思い込み」に気が付いたことはあるかい?

 …そうですね…。「テレビで見たことある」程度の知識しかない状態で、完全に寝たきりの脳性マヒの方に入ったんですよね。もちろんあいさつしても返事がない。コミュニケーションなんてもってのほかと思っていたんですよね。ですが、何回か伺ううちに気が付いたのは、ご自身が起きている時にご挨拶すると目がこちらを向いてくれる事に気が付いた時はうれしかったです。

佐々木 そうかー。「もちろん」という言葉の中に、「挨拶は言葉で行われる」という習慣に基づいた「思い込み」があって、しかも発語の難しい方だから言葉で挨拶ができない。すると「コミュニケーションなんてもってのほか」と思い込んでしまう。でも、「目線」に気が付いた、ということだね。

 ええ。目線が嬉しかったので、私も重ねて挨拶をしたんですよね。

佐々木 それは良かった。コミュニケーションはお互いに反応しあっていくことなんだ。障害を持つ人は自分が反応を示しているのに相手にスルーされた経験が沢山あるから、皆傷ついているようなところがある。だからこれ以上傷つきたくない人は、あえて僅かなサインだけにして受け取って貰える人かどうか様子見しているよ。「明らかに反応しない」という反応は、あなたがどのくらいの熱意で自分と関わろうとしているか見てますよ、という時もある。相手の受け入れ度量を見ているんだ。

 だけど健常者は言葉が返ってこないとすぐ焦ってしまい、反応が無いと思ってキャッチボールを返さなかったりする。本当はノンバーバルでたくさん示されているのにね。堤さんは「何回かして視線に気が付いた」と言ったけど、本当は最初から自分に向けられている様々なことを無意識ではキャッチしていて、受け取ったものが飽和したから意識したんじゃないかな。気配を感じ取って見られている瞬間を見返すから「視線が重なった」となるからね。そんな時って「ハッとする」と思う。「ハッとする」って見落としていたってことだからね。

 ありましたね~。息を吞んだ瞬間。そのご本人様が眠っている時、お母さまが、「おむつ交換大丈夫かしら?」と、ご本人様のおむつ(陰部)に触れた時、「う、ううん!!」と怒ったような声を出し、「怒っているのですか?」とお母さまに伺ったら所、「そうね。」と事も無げおっしゃられて、「お母さんには気持ちを表現されるんだ!」ってなった時があります。

 …そしてその時、「まったく感情がないわけではないんだ」って私思ったんですよね…。改めて気が付いたというか。でも、そう思うってことは、心のどこかで「感情無いかも」って決めつけていたのかもしれないですよね。

佐々木 それはあると思う。社会生活ではむしろ他人の反応に気が付かないように、リミッターをかけていることはあるよね。満員電車も気が付かない方がお互いの為みたいなところあるじゃない。例えば、言葉では「辻褄が合ってて〇」って思っても、「なんか嘘くさいから×」ってことあるよね。そんな時って無意識では何かを感じてるんだけど、微妙な関係の相手だったりすると疑問符を捨ててしまう。解釈困難な不安定要素は不安になるからね。スルーして無かったことにしてしまうのは、よくあると思う。

 最初、「う、ううん!!」ていう唸り声に「わがまま?」って思ったんですけど、今考えると違いますね。お互いに伝えあう何かがあるということ、伝えあいをすることそのものが、とても素敵なことなんですよね。私、その時、その瞬間に立ち会えた感じがとても嬉しかったんですよ。伝える意味がどうこうではなく、お互いの存在を感じること自体の感動というか、パっと心が開かれた感じがしましたね。

佐々木 それが生きるということだからね~。誰かと心を通じ合わせることなんだよね、生きるって。

 一つ知識としてお伝えしておくと、「心がない」という人も病状も存在しないんだ。蘇生医学では明確に言われているけど、心停止して脳波が平らになっても、蘇生後に脳波が無い時間の記憶、周囲の会話を聞いていてその時の自分の感情や会話の内容を詳細に語る事例が多くあるんだ。目を閉じていたのに周りの人の着ていた服装を知っていた人もいる。意識=脳波によって観測される、と理解している人が多いけど、命の不思議はそんなに簡単じゃない。反応が無いから心が無いということもない。知的障害や認知症があっても、記憶力や表現力が低下するだけで、心の活動そのものは失われたりはしないんだ。

 「以心伝心」とか「虫の知らせ」って昔から言うでしょ。五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)とそれを統合する意識とは別に「第六感」、さらにそれ以上のものがあると昔から東洋では言われているしね。第六感がある人って、本当にいるんだよね。俺なんかさ、数メートル先を歩いている女性のお尻を眺めてたら、その人がくるっと振り向いて睨まれたことがあるよ。ごめんね、これセクハラ発言かな。

 えー。佐々木さん、本当はぶつぶつ何か言ってたんじゃないんですか。

佐々木 それは断じて無い。そういう時は自分のスケベな目線を自覚してるからね。

 佐々木さん、スケベな電波が出ちゃってるんじゃないんですか。

佐々木 外に出ちゃう方の「第六感」もあるか。

 でも良かった。佐々木さんも普通の人間なんですね。

佐々木 真面目ばかりではやってられんですよ。

 ですよね。同じ人間ですもんね~


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