【紙ふうせんブログ】

平成29年

紙ふうせんだより 3月号 (2017/04/14)

 

桜が咲きました。皆様、いつもありがとうございます。生まれ出ずる力を象徴するような桜の花を見ると、何か新しい出会いがそこにあるのではないかと思え、気分も昂揚します。

出会いから生まれる奇跡

自分の人生が変わるような出会いが人には何度か訪れます。自分の生活の一部と誰かの生活の一部が重なった時、その出会いが運命的に決められた必然であったかのように突然意味を持ちます。自分の今までの歩みが、まさにその出会いに至るための唯一の細い道のりとして選びとられた軌跡のように感じられ、紡がれた糸のように誰かの糸と交錯していくのです。

1887年3月3日、一つの奇跡的な出会いがありました。“三重苦”(見えない・聞こえない・しゃべれない)として知られるヘレン・ケラーはこのとき7歳、アニー・サリヴァン先生は21才。この出会いは、障害者を孤独の中に閉じ込めていた偏見を打ち破り、それぞれが自分の道を自分で選び歩む旅路の出発点でもありました。この日の事をヘレンは終生「わたしの魂の誕生日」と呼んでいます。

この3月3日は、二人の出会いのきっかけを作り、良き友人として二人を生涯支え続けた“電話の父”と呼ばれるアレグサンダー・グレアム・ベルの誕生日でもあります。ベルは電話の発明だけが取り上げられる事を嫌っていました。ベルは「聴覚障害者の教師」を一生の仕事として誇りを持っていたのです。(聴覚障害者のコミュニケーション方法の研究から音の性質について理解し電話の着想を得ていたベルは1876年3日10日に電話による史上初の通話を行った。)そして、

ヘレン、アニー、ベルの出会いは、障害者教育の可能性を切り開いて切り拓いていくのです

皆さんは海で濃い霧に閉ざされたことがおありでしようか。白い闇にとじこめられ、方角も港がどこにあるのかもわからない船が鉛の重りを海に投げては深さを測り、手探りで進んでいく、あの時の不安な気持ちをご存じでしょうか。

先生の教育が始まる前の私は、まるでそのようなものでした。私には、羅針盤、深さを測る鉛もなく、どこに港があるかもわかりようかありません。ただ、「光を、光をください。と、声にならない叫びをさけび続けていたのでした。しかし、その時すでに、光は私の上に注がれていたのです。私は、近づく足音を感じました。母だと思って、手をさしのべました。誰かがその手を取り、抱き上げ、胸の中に、強く抱きしめてくれました。その方こそ、わたしの心の目をひらくために、わたしを愛するためにきてくださった先生だったのです

(「ヘレン=ケラー自伝」)

人間が人間らしく生きていくには、人とのふれあい、コミュニケーションがなくてはなりません。音のない闇の中でもがいていたヘレンを、知性と人間愛にみちた世界に引きだしたのはアニー・サリヴァンでした。そして、アニーが無限の忍耐を必要とするこの仕事をなし遂げた陰には、ベルのはげましと信頼がありました。ベルは終生、障害者と健常者のあいだにバリアがあってはならない、と主張していましたが、バリアフリーの生き方を身をもってつらぬいたのがヘレンでした。〈奇蹟の人〉と珍しがられながらも、世間の弱者蔑視の壁にたびたび行く手をさえぎられるヘレンを、ベルは折にふれてはげましました。「できると思うことは、どんなことでもできるものだ。きみから勇気をもらう人が大勢いる。それを忘れちゃいけない」

この三人は運命的な出会いをはたし、支えあい、 触発しあって生き、それぞれの仕事によって人間のコミュニケーションの可能生を大きく広げ、さらにバリアのない、だれもがより人間らしく生きる社会の実現を後世に託して去っていきました。 (「ヘレン・ケラーを支えた電話の父・ベル博士」片山しのぶ訳)

ノーマライゼーションの先駆者として

1950年代のデンマークで生まれた「ノーマライゼーション」という理念は、障害者と高齢者・健常者が分け隔てなく同じように社会参加していこうというものです。

その理念の誕生よりも50年以上も前、多くの人の疑問の声を振り払ってヘレンとアニーはラドクリフ大学(ハーバード大学の女子部)への進学を決意、ヘレンは見事に点字での入試に合格。ラドクリフ大学は当時ヘレンの入学を快く思っていませんでした。講義ではアニーが付き添い教授の話を指文字でヘレンに伝え、毎夜ヘレンは記憶をたどって内容を点字タイプライターでまとめました。視覚障害者のアニーは弱視の悪化に苦しみながらも、毎日の課題の本をヘレンに夜通し指文字で読んで聞かせ、教科書の点字訳もアニーやヘレンの友人たちが引き受けました。二人の命を削るような努力があってヘレンは優等賞で卒業。証書授与式で檀上に上がった二人には万雷の拍手が鳴りやみませんでした。アニーの献身をたたえ「大学はサリバン先生にも学位をあげるのが当然ではないか」との声もあがりました。

卒業が間近に迫っていた頃、ベルはヘレンに語っています。「いいかい、ヘレン。自分を一つの型にはめてしまってはいけないんだよ。本を書くのもいいだろう。演説してまわるのもいいだろう。何かを研究するのもいいと思う。できるだけ多くの仕事をすれば、それだけ、世の中にいる目の見えない人や、耳の聞こえない人を助けることになるのだよ。」

聴覚や視覚に障害をもつ人が健常者と同じ公立学校に通学できる事を理想とし、実際に私立学校を設立するなどの活動をしていたベルにとって、ヘレンの大学入学と卒業はその理想の証明と勝利であり、大きな喜びと勇気となりました。

ノーマライゼーションは誰のため

ノーマライゼーションは障害者のためのものではありません。多様性あふれる豊かな社会で生きたいという全ての人のためであり、自分の多様な可能性を拡げていく上で何よりも自分自身のためなのです。ベルがヘレンに「きみから勇気をもらう人が大勢いる」と言ったように、私たちもたくさんの利用者さんと出会い、元気や勇気をたくさん貰っています。同じように介護は利用者さんのためだけのものではなく、私たち自身のためではないでしょうか。

4月からは新年度です。単に仕事として介護をするだけでなく、「自分の人生をどのように自分は生きるのか」という自分自身への問いかけや、この仕事と自分の関わり等を考えながら、春という出会いの季節に新しい出発をしていきたいと思います

ヘレン・ケラーの言葉

ひとつの幸せのドアが閉じる時、もうひとつのドアが開く。しかし、よく私たちは閉じたドアばかりに目を奪われ、開いたドアに気付かない。自分でこんな人間だと思ってしまえば、それだけの人間にしかなれないのです。あきらめずにいれば、あなたが望む、どんなことだってできるものです。第六感は誰にもあります。それは心の感覚で、見る、聴く、感じることがいっぺんにできるのです。ベストを尽くしてみると、あなたの人生にも他人の人生にも思いがけない奇跡が起こるかもしれません。世界で最も素晴らしく、最も美しいものは、目で見たり手で触れたりすることはできません。それは、心で感じなければならないのです。


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