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平成26年

平成26年10月 紙ふうせんだより (2014/10/24)

台風にもめげずに訪問して下さっているヘルパーの皆様、いつもありがとうございます。

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台風が秋の風を連れ来て、少しずつ木々が色づいています。

夏の強い日差しと師走のせわしさの間隙にある秋は、ゆったりと物思いにふける季節です。やがて訪れる冬に備えなければならないのに、今はこの心地良さに留まっていたい。しかし冬は駆け足にやってきます。その切なさが郷愁をさそうのでしょうか、秋を題材にした童謡も沢山あります。

 

 

秋の童謡

秋の童謡と言えば何を思い出しますか?「もみじ」「赤とんぼ」は、誰でも思い浮かびますよね。「小さい秋」「まっかな秋」はちょっと世代が下ってきます。「懐かしい童謡はなんですか?」とご利用者さんに聞いてみて、一緒に口ずさむのも良いでしょう。外出介助や入浴中などは絶好の機会です。皆で歌を歌う事は、記憶を活性化させるきっかけになったり、感情の表出と浄化といったカタルシス的な心理的・生理的な作用があります。気難しい方などは打ち解けるきっかけにもなるかもしれません。

童謡の裏話

「里の秋」という童謡をご存じでしょうか? 1941年に書かれた時は、「星月夜」という題名で、まだ曲はつけられていませんでした。その時の歌詞は現代とは異なり、3番と4番が父の武運長久を祈り、自分も兵隊に憧れるという内容でした。終戦直後(1945年)に南方からの引き上げ第一船が浦賀に入港する事になりJOAK(現NHK)が、「外地同胞激励の午後いうラジオ番組を放送し、その中で流されたのが、歌詞を変えて曲をつけられた今の「里の秋」だったのです。

『里の秋』

1.静かな静かな 里の秋      お背戸に木の実の 落ちる夜は

ああ 母さんとただ二人     栗の実 煮てます いろりばた

2.明るい明るい 星の空      鳴き鳴き夜鴨の 渡る夜は

ああ 父さんのあの笑顔     栗の実 食べては 思い出す

3.さよならさよなら 椰子の島   お舟にゆられて 帰られる

ああ 父さんよ御無事でと    今夜も 母さんと 祈ります

 

『星月夜』

3.きれいなきれいな 椰子の島  しっかり護って 下さいと

ああ 父さんのご武運を   今夜も ひとりで 祈ります

 4.大きく大きく なったなら   兵隊さんだよ うれしいな

ねえ 母さんよ僕だって   必ず お国を 護ります

 

なじみのある童謡にも歴史的な変遷があり、おそらくは世代によって感じ  方も異なります。「汽車ポッポ」も初めは「兵隊さんの汽車」という題名で、歌詞も現在のものとかなり異なり、蒸気機関車に乗って出征する兵隊さんに日の丸を振って万歳を叫ぶ内容でした。利用者さんの生きた時代背景や文化を知っておくと、会話に幅ができます。そこから秘話が聞けたりすると楽しいですよね。ただ戦争の話題は、思い出したくない方もおられるので細心の配慮が必要です。物事は常に人によって感じ方が異なるので、独りよがりのコミュニケーションになっていないか自身を振り返る必要があります。

歌う事のリハビリ効果(歌が嫌いな方も時々いるのですが…)

高齢者のなじみのある「文部省唱歌」などは、重度の認知症があっても、隣で歌ってくれる人がいれば、自然と歌詞が湧き出てくるように歌って下さいます。頭で覚えているのではなく体が覚えているような記憶の不思議さです。そして歌の節回しに合わせてゆっくりと体を動かせば(肩の旋回やヒザ上げなど)単純な体操よりも、気持ちよく長く回数多く動かす事ができます。嚥下機能や肺活量も改善します。また、歌と共に昔の記憶が甦ります。自分の過去を振り返る事は、今を生きる心細さを安定させます。それは、「私はどこから来たのか」との問いの答えであり、「私はどこへ行くのか」との答えに発展する可能性も含んでいます。日野原重明(監修)「音楽療法入門」(春秋社)には、「音楽は、いろいろなできごとと結びつきやすく、特に高齢者の記憶を再生し、回想する手段として用いられる。回想に使われる方法としては写真や絵、草花等も用いられるが、音楽の強い情緒性が、特に長期記憶と結びつきやすいために、優れた回想法になるものと考えられる。」とあります。

回想法とは

回想法は多くの高齢者施設などで行われています。日時・場所を設けテーマを決めグループでセッションのように行う回想法から、昭和の写真集や昔の玩具などを眺めながら日常会話の中で思い出話を引き出す気軽なものまで、幅広い概念で回想法が応用されています。グループ回想法では若干のルールがあります。2

(MY介護保広場より)

①語り手の尊厳を守る

②語られた人の尊厳を守る

③回想法参加者全員が、そこで語られたことを他言しない

④語り手の話が、毎回変わっても否定しない

⑤相手が話したくないは無理に尋ねない

このようにルールをみると、基本的には“当たり前”と呼べるような内容です。尊厳を守る事は基本的人権や介護保険法の根幹ですし、他言しない事は個人情報保護などでも規定されているところですが、それ以前に人と人が信頼関係を結ぶ上でもっとも重要な事と言えるでしょう。ルールの主旨は、発言が批判や評価されずに、安心して自由に行われる場を作る事が主目的となっています。介護現場で行われているアセスメント(課題抽出などの意)でも、利用者さんの発言に「もっとこうした方が良いよ」とか「それはダメですよ」と言ってしまったら、発言を抑圧する事になるかもしれません。

人生を回想するという事(ライフレビュ―・人生回顧)

アメリカの老年学者ロバート・バトラー(1927-2010)は、回想法という手法の元となったライフレビューという概念を提唱しました。回想法は「いきいきと暮らしていた時のことを思い出すことによって情緒を安定させる手法で、回想は時に、不安や徘徊などの状態の改善に役立ち、自信や自己肯定感を 回復させ、脳を活性化させる。老人たちが頻繁に過去を思い出すのは、自分自信の確かさを確認する積極的で自然な行為ではないか」と言っています。

バトラーが、ライフレビュ―を提唱した頃(1963)のアメリカでは、高齢者の回想を、“過去への繰り言” や“現実からの逃避”と否定的にとらえ、「老年精神病の初期症状」とのレッテルを貼っていました。(当時のアメリカ社会は、高齢者を「老いぼれ」などと侮蔑し高齢者差別が行われていました。バトラーは後に、“エイジズム”年齢差別という造語を作り問題提起をしています。)

しかしバトラーは、高齢者が過去を思い出す傾向が強くなる事を病気ではなく自然な事とし、「高齢者の回想は、死が近づいてくることにより自然に起こる心理的過程であり、また、過去の未解決の課題を再度とらえ直すことも導く積極的な役割がある」と肯定しました。それは「過去の経験、とりわけ解決できないでいた葛藤などに気付くような、ごく自然に、誰にでも起きる精神的な過程」であり、さらには“未解決な葛藤”を見つめ過去に折り合いがつけば、人生に統合感が生まれ、人生の要約がなされ、死に対する準備が出来るとしました。

認知症の症状? ちょっとまって!

認知症による様々な“周囲の人が困ってしまう”行動は、かつては「問題行動」としてレッテルが貼られていました。今、認知症のとらえ直しが進み、それらは「行動・心理症状」と呼ばれ、周囲の人の協力と介護方法の工夫で減らせる事ができるとされています。

病気の進行などで命が危ぶまれる時など、おかしな行動をする人は認知症に限らずにあります。ライフレビューの考え方によると、人は、死の接近を察知するとすぐに無意識的にライフレビュ―を開始すると言われています。人生に強い心残りがあって人生を回想した場合、その“未解決の葛藤”が顕在化し、周囲の人が困るような行動を取ってしまう事もあるでしょう。それは、本人や周囲の人が“未解決な葛藤”を意識し振り返り受け留め、“過去と折り合いをつけられるように”、それを願って症状が現れたとも考えられるのではないでしょうか。

人生の最晩年に何を感じるか

「高齢者が自らの死期が近づきつつあると感じ、人生を振り返り始めるときの共通するテーマはありますか?」とのインタビューに、バトラーは即答しました。「『和解』です。兄弟姉妹との仲直り、血縁関係者との和解、配偶者との和解さえあります。」

これは、人生において人間関係がいかに重要であるかを示唆しています。誰かと折り合えなかった経験は誰にでもあります。葛藤の無い人生などないでしょう。その人生の最晩年に出会ったヘルパーさんと打ち解けあう事ができれば、たとえそれまでは他人を遠ざける生き方をしていたとしても、結果的には肯定感を持って締めくくれるのではないでしょうか。それは、ヘルパーさんは葛藤の対象そのものではないけれども、他者や社会との交流を回復するという広い意味での『人生との和解』となってくるのではないでしょうか。そう考えると私たちヘルパーの役目は大きく、大変意義深い仕事なのです。

時々私は、自分が介護を受けるようになったら…と想像します。その時に私が「ヘルパーなんて、どうせ手抜きで自分本位の介護をするんだから、介護なんて受けたくない」と思うか、「どんなヘルパーさんが来るか楽しみだ、みんな良い所を持っている。もし何かに悩んでいたら、介護を受けながらそっと聞いてあげよう。」と思うかは、実は今の自分自身の生き方にかかっているんだなぁ…と思うのです。

介護を受けながら、自分が現役だった頃一緒に利用者さんと童謡を歌ったな。

そう、母も歌ってくれた。自分も子供の寝入り際に歌っ

てあげたな…そんな事を思い出してみたいものです。

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