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平成25年9月 紙ふうせんだより (2013/12/26)

NHK連続テレビ小説「あまちゃん」がついに最終回です。毎朝の放映を楽しみにしていたヘルパーさんやご利用者さんも多かったと思います。近年これほど人気沸騰した朝ドラはなく、インターネット上でも“あま絵”と呼ばれるイラストをファンが描いて公開するなど、社会現象になりました。なかでもクールというかモッサリというかあまり感情を表に出さない水口琢磨(松田龍平)が天野アキ(能年玲奈)の事にはムキになる様子に、恋心を刺激された女子が“ミズタク萌え”で盛り上がるなどしていました。「あまちゃん」の面白さは、登場人物の表の性格だけではなく、隠された裏面をきちんと描いている事ではないでしょうか。

 

主人公のアキちゃんは、言いたい事をいってもあまり裏がなく、個性的なキャラとして周囲から愛されます。しかし実は東京に住んでいた時は、ネクラで存在感のない平凡な子だったことを、自分でも認識しています。そのアキちゃんが北三陸に来て自分のやりたいこと“海さ潜りてぇ”を見つけてから、輝き始めます。その輝きに触発されて、学園一の美少女でお嬢様のユイちゃんも「東京でアイドルになりた~い」と叫んで二人は親友になります。何もない田舎では大人達が観光客誘致などの思惑をくすぶらせています。そこに、何十年ぶりの十代の海女さんが誕生し、ユイちゃんはミス北鉄となり、この二人を抱き合わせてのイベントを大人達は計画します。すると自信満々だったユイちゃんが臆病になってしまいます。

 

東京で平凡だった子が田舎で輝いてアイドルになったり、学園一の美少女がグレてみたり、静かな人が情熱を燃やし、家庭に君臨する高圧的な父が優しくなり、良き妻良き母を自認していた人が空虚さを感じ失踪したり…。そして結局は元の鞘に収まるのですが、その過程で登場人物の立場が逆転するなどを繰り返しつつ、それぞれが自分の生きて来られなかった一面を経験し、180度ならぬ360度の変化をして、一回り大きく成長していきます。

 

対象的なアキちゃんとユイちゃんですが、アキの母の春子(小泉今日子)と元アイドルの大女優・鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)も対照的でした。鈴鹿ひろ美は実は音痴で、その“影武者”として歌の吹き替えを担ったのが春子さんでした。鈴鹿さんが春子さんに、「歌手になれなかったあなたが結婚して子供を産んで、私のできなかったさまざまな経験をしている。私は女優一筋で、それ以外は何もして来られなかった」という趣旨の発言をした場面は印象的でした。春子さんは結果的には芸能プロダクションの社長となり、鈴鹿さんはそこの所属女優になるなど、スポットライトで照らされなかった影の存在だった人が表舞台に立っていくような、光と影が混ざり合い融合していく結末は、人生の意味深さを感じるものでした。そういえばアキちゃんも、アイドルグループ・アメ横女学園のセンターの“シャドー”を担当している時期がありましたね。

 

分析心理学では、自分自身が“自分”として自覚している以外の、自分自身が持つ可能性を“影”(シャドー)と呼んでいます。自覚している自分(自我)を表とするならば、影は、表の自分にとっては、表と対立する否定的なものとして現れてきます。例えば、普段は感情を抑制すべきと考え折り目正しくしている人が、何かをきっかけに感情を爆発させるような事があれば、その爆発は“影”が現れたとも言えます。その“影”を恐れ抑え込む努力をしたとすれば、人格は偏った平板な融通の利かないものになりかねません。むしろ、表の自分自身が持つ価値観の幅を拡ようと努力し、感情の爆発には意味や価値があると捉え、出現した“影”の自分自身を受け入れていくようにしていった時に、真の「自己」の全体性が高められていきます。「あまちゃん」の人々は各々が自身の影を経験し、時に自分の影を象徴するような人と出会って対立しながらも和解し、自身の影を表の自分と統合していったと考えられます。そこに、ドラマの起伏が生まれ奥深い味わいが生まれたのです。

 

さて、訪問介護では、利用者さんとヘルパーさんが上手くいかない事もあります。そして「相性」の問題として、仕方がないというような終わり方をする時があります。これは「相性」との一言で片づけてしまうには惜しい事だと思います。お互いの感情が逆撫でされる時、相手が自分にとっての影を象徴するような意味を持っている時があります。影は“表”にとっては受け入れがたいものですが、自我の影の側面を意識し自己の全体性の中に受け入れていく事で人格が円熟していくのですから、そのきっかけを、相手が提供してくれていると思えば、それは素敵な出会になるのです。器用に世間を渡り高学歴で高収入だった利用者さんに、真逆のヘルパーが入るというケースもあります。この出会いも、掘り下げれば双方にとって深い意義があると考えられます。

 

また、高圧的で子供を押しつぶすような父のイメージ(父に対する肯定的“強くて立派”なイメージの負の側面)を持つ利用者が、自分の父のイメージを重なり、反発心が起こってしまうこともあるでしょう。この状況を受け止めてヘルパーが乗り越えていく時に、ヘルパーの内面では心の中の負の父親像(自分の否定してきたもの=影)との和解が行われます。否定的な親イメージが母親の場合もあるでしょう。子供を「包み込み育む」肯定的な母親イメージに対して、否定的な方は「飲み込み食い物にする」というイメージを持っています。シンデレラの継母(グリムの原作では実母)が前者で、魔法使いが後者と言えます。このような事を考えると、昔から“影”や“負の側面”との出会いは、人間として自立していく上で、とても大切な意味を持っているものだと気づかされます。寄せては返す波のように感情は日々移ろいやすいものですが、否定的な感情が高ぶった時こそ、立ち止まってその意味を汲み取りたいと思います。


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